連載『少年野球のコンディショニング』 バックナンバー
第5回 「理に叶ったフォーム作り[フィールディング編]」

【内野手編】
■基本は「股割り」
 内野手にとって、その優劣を大きく左右するのがゴロの処理精度。「捕球」と「送球」という2つの動きを素速く正確にこなすためには、まず理に叶った基本動作の理解と習得が重要です。最終的にはそれが肩やひじ、腰の障害予防にもつながり、コンディショニングの質を向上させます。

 よく守備の練習中に、監督やコーチから「もっと腰を落として捕れ!」という檄が飛びます。しかし、生活様式の変化(椅子やソファーに座ることや洋式トイレの増加、駅などでの階段の上り下りの減少など)から、股関節の固い若年者が年々増えており、正しく腰を落とすことができない選手をよく見かけるようになりました。股関節が固く、下半身の筋力も弱いために、ひざはわずかに曲がりながらも、ベルトのところで体を折り曲げて、上体だけを下げてしまうのです。これでは腰を落としたことにはならず、こうした動作の繰り返しが下背部への疲労を蓄積させ、腰痛の一因にもなりかねません。

 フィールディングの動作は「下から上」が鉄則です。そのためには、下の写真のような「股割り」を基本動作とし、ベルトではなく脚の付け根、つまり股関節のところで体を折り、ひざを90度近く曲げてお尻を落とすようにしなければなりません。これが腰を落とすことの真意なのです。そして、この体勢をキープしながら、前、そして左右に素速く動けることが、フィールディングの大前提となります。

やや広めにスタンスを取り(肩幅の2倍強)、つま先を若干開いて立つ 背すじを伸ばしたまま、お尻を突き出すようにして下に落とし、太ももが地面と平行になるまで膝を曲げる。このとき、つま先と膝の向く方向は同じ

■理に叶った捕球位置
 股割りの動作ができるようになったら、今度はそこから捕球体勢を作ってみましょう。股割りの状態から、下の写真左側のようにグローブ腕と同側の足を一足分前に踏み出し、つま先のラインよりも前にグローブを差し出します。

 そして、ここでカギとなるのが、捕球の際のグローブの位置です。一般的には、「正面で捕る=スタンス幅の中心で捕る」というのが基本となりますが、地を這うような正面のゴロほど処理が難しいと感じている人も少なくないはずです。それは、向かって来るゴロに対して早い段階から真正面に入ってしまうと、ボールとの距離感をつかむのが難しく、打球を線で捉えることができないため、ボールがどう弾んで来るのかがわかり辛いからなのです。

 この問題を緩和するためには、捕球の位置を中心から前足寄りにずらすとよいでしょう(下の写真右側)。そうすることでわずかに角度が付き、下のイラストに示したように、打球の軌道を斜めから見ることができるようになるのです。そしてさらに、そこで捕球することで、スローイングに移行する際のステップ幅を若干大きく取ることが可能となり、下半身の力をより多く使って送球することができるというメリットも生まれます。



■グローブの出し方とスローイングへの移行
 また、グローブの出し方にも注意を払いましょう。一般的には、向かって来る打球に対して直線的にグローブを前に出すことが多いようですが、バウンドがうまく合わなかった場合、グローブの土手に当たって落球する確率が高くなります。これを防ぐためには、脇を締め、ひじを支点として手で小さな円を描くようにグローブを差し出すとよいでしょう(連続写真)。

 捕球後はそのまま円を描きながら、下から上にグローブを動かし、利き腕側の肩のところまで持っていきます。その途中でボールを利き手に持ち替え、送球する方向にステップしながらスローイングに移行します。

 さらにこのとき、ボールを持ち替えた直後、コップの水をこぼすようにして手を内側にひねれば(下の写真)、自然にひじから腕が上がり、合理的なテイクバック動作となります。捕球位置が体に近いと、ボールを持ち替えてからひじを体の後ろに引くしかないため、腕が肩甲骨面を逸脱して上げ辛くなります。これではゼロポジションでのボールリリースができなくなり、肩やひじの故障リスクが増えてしまいます。「グローブをもっと前に出して捕れ!」という指導の常套句は、その延長線上にある送球動作のところで、障害予防にもつながっていたのです。

ボールを持ち替えた瞬間、
コップの水をこぼすように手を内側にひねる

■逆シングルは罪か?
 ところで、日本の野球界では、逆シングルで捕ることを嫌う傾向が少し強すぎはしないでしょうか?確実性を考えれば、正面で捕球することはとても大切です。しかし、逆シングルで捕っただけでやみくもに手抜きをしていると勘違いされるのは、選手にとって少々困りものでしょう。

 先にも述べた通り、正面で捕球する際にはスタンス幅の中心よりも前足寄りで捕った方がよく、無理をして正面に入り、中心よりも後ろ足寄りで捕るのであれば、むしろ逆シングルで捕った方が合理的です。ただゴロを捕るだけならそれでもよいのですが、そのあとに続くスローイングのことを考えれば、逆シングルの方が体重移動をうまく使えるではありませんか(連続写真)。肩やひじへの負担もその方が少なくて済みます。だからぜひ、ノックの際に逆シングルの練習も加えて頂きたいのです。これも立派なフィールディングの技術なのですから。

 特に、ランナーがいるときの守備で逆シングルは効力を発揮します。2004年はヤンキースとデビルレイズの開幕戦を日本でおこないましたが、その際こんなプレーがありました。ヤンキースの攻撃で、1アウトランナー2塁。その場面で2塁ベース寄りにセカンドゴロが飛びました。2塁手が正面で捕ろうと思えば捕れる打球です。当然、打球の方向から2塁ランナーは3塁に進塁しましたが、デビルレイズの2塁手は、ランナーを視野に入れながらあえてそこでゴロを逆シングルで捕り、1塁に送球したのです。打球がもっと速く、ランナーのスタートが少し遅れていたら、3塁に送球してクロスプレーになっていたかもしれません。そのとき2塁手が無理やり正面で捕球していれば、3塁への送球は少なからず窮屈なものになります。それが悪送球になれば悔やまれる1点が…。まさに次のプレーを考えた緻密な打球処理でした。逆シングルは決して罪ではないのです。


定位置より利き腕側に飛んだ打球を無理して正面で捕った場合。スローイングがとても窮屈になるのが見て取れる


定位置より利き腕側に飛んだ打球を逆シングルで捕った場合。スローイングへの移行がとてもスムーズである

【外野手編】
■レーザービームの発射台
 外野手の見せ場と言えば、やはりバックサードやバックホームにおける矢のような送球でしょう。イチローのレーザービームにはいつも驚かされるばかりですが、肩の強さもさることながら、前に突っ込んでゴロを捕る技術にも目を見張るものがあります。全速力で前進してゴロを捕るのは、ある意味一か八かのプレーで、ちょっとでもバウンドが合わなかったり、イレギュラーしたりすれば、すぐにポロッとやってしまいます。

 そこで、ここでも重要になってくるのが、グローブの出し方です。基本的な方法は内野手と同じですが、外野手の場合は捕球する際のグローブの角度にも注意したいものです。通常はグローブの指先が真下を向き、土手の部分が真上に来ますが、前進してゴロを捕る場合は、この角度だと土手のところからボールがこぼれてしまうことも少なくありません。それを少しでも減らすために、グローブに若干角度を付け、下の写真右側のように斜めに使うようにすれば、親指の付け根の部分がふたとなってファンブルを防いでくれます。いくら強肩の持ち主でも、ポロポロやってばかりでは宝の持ち腐れです。反復練習をして、レーザービームの発射台を磨きましょう。


 捕球の際の足の位置は下の写真のように2パターン。これはどちらかに強制せず、選手のやりやすい方を選択すればよいでしょう。


■目をぶれなくするために
 フライやライナーのランニングキャッチも外野守備の醍醐味です。打球の落下地点に最短距離で到達するためには、正確な目測と一度打球から目を切る技術が必要となります。それにはまず、走っていてもボールがぶれないようにすることが重要で、通常の外野ノックのほかに、ウォームアップやランニングの中で「腰切りバック走」をおこなうとよいでしょう。

 腰切りバック走は、左右に腰を切りながらの背走を意味しますが、やり方は以下の2つ。必ず何か一つ目標点を定め、それをボールと見立てておこないましょう。距離は塁間で可。

<方法1>
 @指示者の笛の合図でスタート。
 A目標点から目を離さず、指示者が笛を吹くたびに、左右交互に腰を切って背走。
 B定めた距離まで達したら、捕球動作。


<方法2>
 @指示者の笛の合図でスタート。
 A目標点を一回見たら、すぐに目を切って前向きにダッシュ。
 Bもう一度指示者が笛を吹いたら、再び目標点を見て左右どちらか半身の体勢で背走し、捕球動作。


 最後に、内外野問わず、フリーバッティングのときはできるだけ自分のポジションに入って生きた打球を捕ることが大切です。打撃練習ではどうしても守備の優先順位が下がり、ただの球拾いになりがちですが、特に試合前はいろいろな想定をしながら、実際の打球で守備の精度を高めましょう!

 以上、理に叶ったフォーム作り[フィールディング編]、御理解頂けましたでしょうか?今回も最後までお読み頂き、ありがとうございました。



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