連載『少年野球のコンディショニング』 バックナンバー
第6回 「ウォームアップの概念」

 連載はこの回から"フィジカルコンディショニング"のカテゴリーに入ります。その第1回目は、ウォームアップについてです。連載第1回でも述べた通り、少年野球に限らず、ウォームアップは選手まかせというチームが多く、そのやり方もまちまちというのが現状です。選手のコンディションを把握するという意味で、ウォームアップの時間帯は貴重な情報源。選手の表情、声や汗の出具合、からだのキレ、反応の速さ・正確さなど、見るべき点はたくさんあります。指導者の方々には、再度ウォームアップの概念について見直して頂き、ウォームアップからしっかりと選手の動きをチェックするよう、改めてお願い致します。

■ウォームアップの基本概念
 ウォームアップは、その内容により次の3つに分類されます。

a.一般的ウォームアップ
 これは、ウォーキングやジョギング、ブラジル体操、ダイナミックフレキシビリティドリル、ストレッチングを指し、ウォームアップの導入部分です。気温が低い場合は、この時間を十分にとる必要があります。

b.専門的ウォームアップ
 これは、競技の特異性に合わせたランニングやドリル、エクササイズを指し、瞬発系、反応系、S.A.Q.(Speed&Agility&Quickness)などがあります。気温が高い場合や専門準備期および競技期には、一般的ウォームアップよりも専門的ウォームアップに時間を割くようにします。ここでは、身体の準備だけでなく、心と頭のウォームアップも兼ね備えています。専門的ウォームアップ終了時に、できるだけ100%準備OKの状態に仕上げることを意識付けさせることが大切です。

c.技術的ウォームアップ
 これは、実際の競技動作の準備を指し、キャッチボールやトスバッティングなどが該当します。

 期分けや天候(気温,湿度)により、ウォームアップの内容を考慮する必要があり、上記a〜cの配分が変わってきます。時間は最低でも15分必要で、平均的には30〜40分を要します。

 また、ウォームアップの目的は以下の通りです。

  ●心拍数,体温,筋温などバイタルサインの上昇
  ●筋肉,関節の柔軟性向上
  ●アドレナリンレベルの上昇
  ●精神的賦活(集中力,やる気,チームの結束力)
  ●反応時間の短縮(感覚受容器【主に目】⇒脳⇒運動器の連係)


 ウォームアップの効果は、約45分間持続すると言われており、練習や試合開始までに時間がある場合は、ウォームアップをいつから始めるか考慮しなければなりません。特に、遠征などで時間や場所に制約を受ける場合は、臨機応変に対応し、その制約の中でベストの状態に持っていけるようなプログラムを組まなければなりません。長期の遠征でトレーニング量が低下している場合は、ウォームアップに若干トレーニングの要素を加味することも必要になってきます。

■ウォームアップの具体例
 以下に、具体的なウォームアップの流れを示します。ウォームアップでは、まず最初に必ずウォーキングやジョギングで徐々に心拍数を上げ、血液循環を促してからストレッチングに入りましょう。そして、ストレッチングも、筋肉や関節を静かに伸ばしていく静的なものから始め、反動をつけて関節を動かしていく動的なものに移行していきます。ウォームアップの効果を最大限に得るためには、この基本的な流れを順守することがとても重要です。

 ●基本フロー
  ウォーキングまたはジョギング,ブラジル体操(徐々に心拍数を上げていく)
    ↓
  ストレッチング(スタティック【静的】⇒ダイナミック&バリスティック【動的】)
    ↓
  ダイナミックフレキシビリティドリル(以下、D.F.D.),ランニング,反応系ドリル,S.A.Q.
    ↓
  技術的ウォームアップ(キャッチボールやトスバッティング時にフォームチェックを!)

 ●具体例
  【期分け】移行期〜一般準備期/季節:冬(40〜60分)
   a.ウォーキング&ジョギング,ブラジル体操(5〜10分)
   b.ストレッチング(15〜20分)
      スタティック(全身)⇒ダイナミック&バリスティック(各関節中心)
                    ・肩関節&肩甲骨エクササイズ(下の写真参照)
                    ・股関節エクササイズ(壁やフェンスに体を前向きに預け、
                     膝を曲げての前蹴り、膝を伸ばしての後ろ蹴り、
                     左右横方向への脚の振り上げを各10回ずつおこなう)
   c.ランニング(20〜30分)
     ・30m/D.F.D.:サイドステップ,キャリオカ(腰切り),もも上げ,ヒールアップ,股関節回し(内外),
               腰切りバック走,ツイスティングスキップ,ジグザグ走など
     ・50m/ 60%ダッシュ
     ・30m/ 80%ダッシュ
     ・20m/100%ダッシュ
     ・ミニコーンドリル(Wラン,シャトルラン,ダイアゴナルランなど)



  【期分け】専門準備期/季節:春(25〜40分)
   a.ジョギング,ブラジル体操(5〜10分)
   b.ストレッチング(10〜15分)
      スタティック(全身)⇒ダイナミック&バリスティック(各関節中心)
                    ・肩関節&肩甲骨エクササイズ
                    ・股関節エクササイズ
      ⇒疲労の度合によりパートナーストレッチング
   c.ランニング(10〜15分)
     ・30m/D.F.D.:サイドステップ,キャリオカ(腰切り),もも上げ,ヒールアップ,股関節回し(内外),
               腰切りバック走,ツイスティングスキップ,ジグザグ走など
     ・30m/ 80%ダッシュ
     ・20m/100%ダッシュ(手指合図)
     ・反応系ドリル(  〃  )

  【期分け】競技期/季節:夏(20〜30分)
   a.ジョギング(5分)
   b.ストレッチング(5〜10分)
      スタティック(全身)⇒ダイナミック&バリスティック(各関節中心)
                    ・肩関節&肩甲骨エクササイズ
                    ・股関節エクササイズ
      ⇒疲労の度合によりパートナーストレッチング
   c.ランニング(10〜15分)
     ・30m/D.F.D.:サイドステップ,キャリオカ(腰切り),もも上げ,ヒールアップ,股関節回し(内外),
               腰切りバック走,ツイスティングスキップ,ジグザグ走など
     ・20m/100%ダッシュ(手指合図)
     ・10m/100%ダッシュ(  〃  )
     ・反応系ドリル(  〃  )

 なお、ウォームアップ時は、衝撃吸収性のよいアップシューズを履くようにし、専門準備期から競技期にかけては、最後のショートダッシュのところでスパイクに履き替える工夫も必要です。

肩関節&肩甲骨エクササイズ
エクササイズ1

腕を前に伸ばし、手の甲と手の甲を向かい合わせる。
肩甲骨を前方にスライド(外転)させ、一呼吸静止させてから元に戻す。
これを最低10回繰り返す。

エクササイズ2

肩を内旋させながら、腕を大きく前回し。これを左右交互に最低10回ずつ。
腕だけなく、肩甲骨をしっかり動かすこと。

エクササイズ3

肩を内旋させながら、腕を大きく後ろ回し。これを左右交互に最低10回ずつ。
腕だけなく、肩甲骨をしっかり動かすこと。

エクササイズ4

背すじをしっかり伸ばし、 肩甲骨を脊柱に引き寄せ(内転)、
一呼吸静止させてから元に戻す。これを最低10回繰り返す。

エクササイズ5

片方の肩甲骨を逆シングルの要領で対角線下方にスライド(外転)させると共に、
もう片方の肩甲骨を脊柱に引き寄せる(内転)。
伸ばした方の腕は肩から内旋させ、手を開いて指を目一杯伸ばす。
曲げた方の腕は前腕を回内し、こぶしを握る。
これを左右交互に最低10回繰り返す。

エクササイズ6

頭の後ろで手を組み、完全に脱力する(上腕が肩甲骨面上)。
肘の高さを変えずに手を上に上げ、両肩をゼロポジションで内旋・外旋。
これを最低10回繰り返す。
片方を内旋、片方を外旋としてもよい。


 以上、ウォームアップの概念、御理解頂けましたでしょうか?今回も最後までお読み頂き、ありがとうございました。