| 連載『少年野球のコンディショニング』 バックナンバー |
| 第9回 「トレーニングの基本的な考え方」 |
フィジカルコンディショニング講座の第4回目は、トレーニングについての基本的な考え方です。よく「ウェイトトレーニングの開始時期は?」という質問を受けますが、まずはその辺から解説に入っていきたいと思います。あまり早い段階から高負荷トレーニングをおこなうことは、骨や関節などに負担をかけるので、注意が必要です。
■ウェイトトレーニングはいつぐらいから始めればよいのか?
はじめに、下の図を御覧下さい。
 |
このグラフは、「スキャモンの発育曲線」といって、人間の各身体部位(機能)の成長パターンを示したものです。リンパ型は免疫機能、神経型は脳・神経系と感覚器官、一般型は骨格や筋肉、生殖型は生殖機能の成長パターンをそれぞれ表しています。この図を見るとわかるように、神経型は小学校の低学年ですでに成人と同レベルまで発育し、一般型は14〜17才(第二次性徴期)で急激な伸びを示します。そのため、あまり早いうちからウェイトトレーニングをおこなっても、効果が出にくいばかりか、逆に負担を増やし、障害を生むことにもなりかねないのです。小学校から中学校にかけては、心肺持久力や筋持久力の向上に主眼を置き、さまざまな運動動作の習得に当てるべきです。野球以外のスポーツも積極的に取り入れ、動作に偏りが出ないようにしましょう。成長の度合いには個人差があるので、一概に年齢だけで区切ることはできません。一つの目安として、「身長の伸びが頭打ちになってきた頃」を基準にするとよいでしょう。
■おススメのトレーニング
では、具体的にどのようなトレーニングがよいのか、いくつか挙げてみます。成長期においては、自分の体重(自重)を使ったトレーニングが基本となります。器具を使わないものとしては、腕立て伏せ、腹筋、片脚立ちバランス、四股踏み、手押し車、馬跳び、股関節エクササイズ、ランジ系ドリル、バウンディング系ドリルなど、器具を使うものとしては、鉄棒、懸垂・斜懸垂、登り棒(綱)、雲梯(うんてい)、縄跳び、バランスボールエクササイズ、フィールドアスレチックなどがそれぞれお薦めです。
なお、背筋のトレーニングについては、もちろんおこなってもかまわないのですが、一般的に「腹筋・背筋」と称して、どちらも同じ回数やらせることが多いのではないでしょうか?元々、人間は立っているだけで背筋をよく使っているため、一般的には背筋の方が強いのです。当然、腹筋も使っているのですが、腹筋と背骨の間には内臓があり、背骨に沿って付いている背筋群に比べれば弱いのです。特に、生まれつき出っ尻で、背中の丸いお子さんは、背筋トレーニングのやりすぎには注意しましょう。腰に負担をかけてしまいます。腹筋・背筋のトレーニングをおこなうときは、腹筋をメインに考え(例えば、腹筋20回に対し、背筋10回程度)、無理に上体を起こさせる必要もありません。必ず膝を立てておこない、自分のおへそを覗くようにしてあごを引き、肩甲骨が地面から離れる程度でかまいません。要は、腹筋がしっかり収縮していればよいのです。
■成長痛の問題
成長痛についてもよく相談を受けます。私自身は成長痛の経験がないため、具体的にどういう痛みなのかはわからないのですが、幼児期から小学校3〜4年生にかけて多いと聞きます。以下は、医学的文献からの抜粋です。
「成長痛」とは小児期にみられる下肢痛のうち、他覚(臨床的、X線学的)所見を欠き、可能性のある器質的疾患をすべて除外できる場合に用いられる呼称。発現機序については諸説があり明確ではないが、本人および母親の性格や、情緒面に原因があるとの考えが有力。@甘えん坊で他人に依存する性格、A子に対し過干渉の母親、B下に子が生まれ急に親の関心が変化した、などがよくみられる要因である。これらにより単なる疲労現象が増幅された結果、症状の発現に至るものと考えられる。
膝周囲、大腿部、足の痛みがほとんどであり、膝関節から足関節部までが全体の3/4を占める。疼痛は主に夕方から夜半にかけてのことが多く、大声で泣きわめくわりには翌朝はケロッとしているのが特徴。本人に痛みの部位をたずねてもどこが痛いか明確に答えられないことが多く、痛みの部位が変わることも往々にしてみられる。左右どちらが痛かったかをたずねた場合、とっさに答えられないこともよくある。
特に治療の必要はなく、湿布をしたり、軽くマッサージをするだけで可。痛みは成長と共に治っていく。 |
|
上記にもあるように、成長痛は病気ではありません。痛みがだんだん強くなったり、昼間も痛い場合は、整形外科医の診察を受けましょう。トレーニング量の増えるこの時期は、ウォームアップやクールダウンをしっかりおこない、アイシングなどのセルフケアで疲労が蓄積しないようにすることが重要です。また、日常的な膝痛(膝蓋骨や膝蓋腱、膝蓋骨下方の骨の出っ張り[脛骨粗面]の痛み)のある場合は、ジャンパー膝やオスグッド病に発展する可能性もあるため、トレーニング量を減らすなど、決して無理はさせず、大腿前部のストレッチを入念におこない、医師の指示に従って下さい。それにしても、成長痛が甘えん坊に多いというのはとても興味深いデータですね。
以上、トレーニングの基本的な考え方、御理解頂けましたでしょうか?生活様式の変化により、姿勢の悪い子供、股関節の固い子供が増えています。正しい姿勢の保持はフィジカルコンディショニングの大きな基盤となりますので、股関節の柔軟性と併せて、最優先課題として取り組んで下さい。そして、ここで言うまでもなく、トレーニング計画は期分けの理論に基づいておこないましょう。今回も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
|
|
|