連載後記 「ストリート・ベースボールのススメ」
私が野球を始めた昭和40年代の終わりの頃は、今のような少年野球チームはほとんどなく(リトルリーグはありましたが)、放課後、級友たちと路地裏や団地の裏庭などでおこなった"ストリート・ベースボール"で野球を覚えました。手打ち野球に、ラケット野球、もちろん軟らかいゴムボールを使っての素手の野球です。グローブをはめておこなう、ややまともな野球(軟式)は、たまの日曜日にクラス対抗(当時は1学年4クラス)で試合をする程度。場所も公園の広場とはいえ至るところデコボコで、ちょっと大きめの石ころや板切れをベースの代わりにしていました。今のようにサッカーやテニスなど、野球以外のスポーツをする小学生はあまりおらず、日常の遊びの中で野球をするのがごくごく当たり前の習慣でした。無論、誰かに教えてもらう野球ではなく、見よう見まねの自己流野球。それでも、みんなそれなりに上手で、少なくとも今の子供たちより平均レベルは上でした。
ストリート・ベースボールは、場所が当然の如く限られているため、決まった方向にしか打てないとか、フライは打っちゃダメとか、今思えば笑ってしまうくらい制約だらけでした。そんな中でも、私が特に役に立ったと思うのは、ラケット野球と路地裏野球ですね。ラケットでボールを遠くへ飛ばすには、ラケットのど真ん中に当てることと、ラケット面の角度を微調整することが必要で、うまく面を作らないと思ったようにボールを打つことができません。プロ野球の解説で、たまに「バットで面を作る」という表現をしますが、ラケット野球をやったおかげでそれがよくイメージできます。それと、路地裏野球では、道幅が3〜4mしかないため、まっすぐ打ち返さないとすぐ民家に入ってしまいます。しかもこちらはラケットではなく、普通のバットです。道の左側は近所でも有名な頑固じじいの家、右側はガラス窓のたくさんあるお金持ちの大きな家。どちらもボールが入ってしまったら大変です。いつもそんなところでボールを打っていたので、バットコントロールがうまくなりましたね。守備に関しても、素手でやることが多かったため、手のひらでボールを取る感覚を学べましたし、イレギュラーバウンドするのが当たり前の場所ゆえ、自然と球際にも強くなりました。
それに比べれば、今の子供たちは恵まれていますよね。チームに入りさえすれば、ちゃんと教えてくれる人がいて、低学年から始めた子供はとても上手になります。私もこれまでに野球塾で何人かの小学生と接しましたが、どのお子さんも投げる打つの基本形ができています。ただ、何かこう、型にはまりすぎているというか、個性がないというか、それは見ていて強く感じますね。教えてもらわないとできない・やらない、応用が利かない、そんな脆さを感じるのは私だけでしょうか?
よく、アメリカメジャーリーグの選手は投げ方や打ち方が個性的だと言われますが、特にそれが顕著なのはドミニカ共和国を始めとする中米出身の選手です。周知の通り、中米の国は日本のように恵まれておらず、子供たちは木の枝や手製のボールを使ったストリート・ベースボールで育ちます。だからというわけではないのですが、個人技の幅をもっと広げるためにも、ぜひストリート・ベースボールをお薦めしたいのです。30年前とは住宅事情も交通事情も異なりますので、私が子供の頃と同じようなやり方はなかなかできないでしょうが、チーム練習の中に手打ち野球やラケット野球を入れるとか、それをチームメイト何人かで遊びでやってみるとか、いくつか方法はあると思うのです。週末以外は野球をやらず、あとは塾と習い事に追われるというお子さんもいるかもしれませんが、それでは体も強くなりません。勉強はもちろん大切ですけれど、中学、高校と長く野球を続けたいのなら、できる範囲内でかまいませんので外で遊ばせるようにしましょう。子供の頃に自らが体で覚えたことは一生忘れません。型にはめた野球は、選手の自主性や独創性の芽を摘んでしまいます。指導者の方には、目先の勝利だけでなく、もっと長い目で選手の将来を案じて頂きたいと思います。
☆野球以外のスポーツ・遊びで野球がうまくなる方法
めんこ打ち、相撲(四股踏みや鉄砲)、ローラースケート・アイススケート、スキー、テニス、バドミントン、など |
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